
アクアラインを渡るたびに、空がひらけていく
結婚してすぐの頃、私は川崎に住んでいて、夫の実家がある木更津まで月に一度くらいのペースで車を走らせていました。
東京湾アクアラインを通るたびに、海ほたるを越えたあたりで風景がふっとほどけて、運転席から見える空が一気に広くなる瞬間があります。海と空の境目が曖昧で、対岸のビル群がやわらかい光に溶けていくような。あの感覚を、今でもよく覚えています。
はじめまして。地域ブログ「木更津でGO!」を書いている、リナといいます。
「ここに暮らせたら」と思った、ある通勤日のこと
木更津に正式に住むようになるまで、私はアクアラインを使った逆方向の通勤を4年ほど続けていました。
正確に言うと、通勤の半分は木更津発・川崎着。義両親に会いに来た流れで木更津に泊まり、翌朝そのまま会社に向かう、というイレギュラーな日々を、ずいぶん長く繰り返していたのです。
その頃の私にとって木更津は、義実家のある街、という以上の輪郭を持っていませんでした。観光で訪れる場所ではなく、夫の故郷であり、ただ一時的に滞在する場所。それだけだったように思います。
転機は、子どもの保育園を本格的に考えだした時期でした。共働きを続けるためには、頼れる人が近くにいるかどうかで生活の重さが大きく変わる——そう薄々わかってきていた頃に、夫がぽつりと「金田あたりで家、建てる選択肢ある?」と切り出したのです。
金田で家を建てて、義両親が10分の距離になった
金田地区を選んだ理由は、たぶん全部つながっています。
アクアラインの木更津側の出口にいちばん近いので、川崎方面の通勤がギリギリ続けられる距離だったこと。三井アウトレットパークやコストコまで車で数分、という妙な利便性。そして何より、義実家までの所要時間が、車で10分ちょっとに収まる場所だったこと。
引っ越して、しばらくは「義両親と近居している共働きの家庭」というキーワードを、実感として全然咀嚼できていなかったように思います。子どもが熱を出した時にお迎えを代わってもらえる、というだけの話なのに、その安心感がどれくらい大きいかは、しばらく経ってから少しずつわかってきた感じでした。
「ちょうどいい」が、思ったより複雑だった
木更津に暮らしてみてしばらく経つと、この街を一言で形容するのが、だんだん難しくなっていきました。
都会的なものを期待すると物足りないのに、田舎暮らしを期待すると意外と便利すぎる。アウトレットやイオンモールがある一方で、少し走れば里山と田んぼの風景が広がる。子連れで遊べる公園や海岸線がたくさんあるのに、休日は混雑しすぎない。
木更津を「ちょうどいい街」と紹介する人が多いのですが、住んでみると、その「ちょうどよさ」のなかには、選んだ場所と過ごし方によって全然違う表情があることに気づかされます。海が近い暮らしと、駅前で完結する暮らしと、田んぼに囲まれた暮らしが、同じ市のなかにふつうに同居している。
このブログを書きながら、私自身が「自分の選んだ木更津」だけで街を語ろうとしてしまっていないか、気をつけるようにしています。
ミキさんに教えてもらう、地元の側の木更津
このブログには、私のほかにもう一人、ミキさんが登場します。
木更津生まれ・木更津育ちのパート主婦で、ご実家のすぐ近くにご家族と住んでいる、いわば生粋の地元の方です。子どもの学年がうちと近くて、市の子育てひろばで偶然顔を合わせたのが最初の出会いでした。
ミキさんから聞く木更津の話は、移住者の私には絶対に届かない種類の情報で溢れています。「あのスーパーは火曜の午後が一番安い」とか「やっさいもっさいの本気は花火じゃなくて踊りのほう」とか、観光ガイドにも検索結果にも載らない話を、ふわっと当たり前のように教えてくれるのです。
移住者の目線と、生まれ育った人の目線。どちらか片方では片手落ちになる場面が、木更津にはたくさんあります。二人で書くようになってから、ようやく街の輪郭がもう少しまともに見えてきたような気がしています。
このブログを始めた、ある夜の話
ブログを書き始めるきっかけは、子育て支援の制度を調べていた、ある夜のことでした。
市役所のサイトには情報がきれいに並んでいるのに、自分の状況に当てはめてみるとどこから手をつけていいかが見えてこない。同じ世代のママ友に聞くと、それぞれ違う答えが返ってくる。検索しても、木更津という単語と一緒に出てくる情報は意外なほど少ない。
引っ越し直後の私のような人——木更津という街の地名すらまだ馴染んでいない人が、最初に手を伸ばせる入口があってもいいんじゃないか。そんな夜の思いつきが、このブログの出発点です。
読んでくださる方へ
木更津は、アクアラインを渡るとすぐ着く街です。だけど、観光地として上手に立ち回るには少し地味で、移住先として見ると意外なほど多面的で、住んでみないと気づけない奥行きがある場所だな、と思います。
これから木更津に来る方、最近来たばかりの方、ずっと暮らしている方、義実家がここにある方。それぞれの立場で違う読み方をしてもらえるサイトにしたい——というのが、二人でこのブログを書いている私たちの願いです。
「アクアラインの先で見つけた、ちょうどいい暮らし」をタグラインに掲げているのは、この街の「ちょうどよさ」が、住む人によってずいぶん違う形で立ち上がってくるからです。あなたなりの木更津を見つける入口に、このブログがちょっとだけなれたら、書き手としてはとてもうれしいです。
